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ATP存在下におけるキネシンの微小管への協同的結合

ATP 存在下で、キネシンを結合させた蛍光ビーズが微小管上を運動していく様子を、蛍光顕微鏡のもとで観察したところ、その結合は数 µm という長距離に渡って協同的に起きていることが明らかになりました。図Aは、長さ 20 µm ほどの微小管に沿って複数のキネシンビーズが運動していく様子を、1秒ごとの連続写真に記録したもので、溶液中のキネシンビーズが最初に微小管に結合した 地点を赤点で、その後、同じビーズの各時間における存在場所を黄点で示しています。キネシンビーズが+端へ向かって運動していく道すがら、ビーズの近傍で 次々と新たな結合が起こり、その結果、+端に近づくにつれて、高密度のキネシンビーズ集団が形成されていくのがわかります。このような協同的結合は、 ATP 以外のヌクレオチド(ADP, AMPPNP) 存在下では起こらないので、この現象にはキネシンによる ATP の加水分解が必要であると推測されます。

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Long-range cooperative binding of kinesin-coated beads along a microtubule

この結果は、微小管がキネシンに対して親和性の異なる複数の conformation をとり得る、と仮定すると、うまく説明することができます(図B)。キネシンのない時には、微小管は親和性の低い状態が安定ですが、ATP 存在下でキネシンが微小管に結合すると、キネシンに対する親和性の高い活性化状態が誘導され、その結果、キネシンの協同的結合が起こるようになったのではないか、と想像されます。

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さらに詳しい解析の結果、協同的結合は、微小管上を運動しているキネシンビーズの進行方向前方で、より高頻度で起きており(図C,D)、微小管の状態変化がキネシンの運動に何らかの積極的な役割を果たしている可能性が示唆されています。

Long-range cooperative binding of kinesin to a microtubule in the presence of ATP.

Etsuko Muto, Hiroyuki Sakai, and Kuniyoshi Kaseda.

J Cell Biol., 168:691-6 (2005).

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